「×い××」

 墜ちていた。もの凄い早さで、大手保険会社の本社ビルの屋上から。誰もそれが何であるか、認識することができずにいるうちに、何かが潰れる音がする。形を保っていたものが、一瞬のうちにかかるあまりにも強い衝撃によって、何でもないものに変わる徴。たとえば風船、たとえば粘土、あるいは、人間。そのとき人々の脳裏を掠めたイメージは、それぞれに異なっていた。しかし、音がしたと思しき地点を見ても、そこには何の変化もない。ただ、彼らは一人残らず、青い、と感じたという。