貫井徳郎/プリズム

99-18。この試みはいい。紛れもない本格ミステリとしての骨格を各章において反復しながら、全体を俯瞰する読者から見たときにおいててのみ、骨格がジャンルのコードを破壊しようとしているのがわかる、っていうのは。ただ、たいして面白くないので困る。章が進むたび登場人物がプリズムのようにその姿を変えていくっていうそれ自体はすごく良いのに、全体の世界観っていうか、根ざしているものがこの作家の資質の内部にとどまっている(あたりまえだけど)。で、なんというかこの作家の書くものとアイディアがかちあってしまった印象。
この作家はこういうプロット芸よりは愚直に、一直線に書くほうが読み応えが出るし、このプロットだったらもっと破天荒で、もっと頭のおかしく、もっと面白いアンチ-本格ミステリが書けたような気がしてならない。

プリズム (創元推理文庫)

プリズム (創元推理文庫)