桜庭一樹/赤朽葉家の伝説

やっと読んだ。第一部まで読んでぴんと来ず放置していたのだが、第二部から第三部までの流れがすばらしくのめりこんで読んだ。が、一方でどこか醒めた気持ちでいた自分がいたことも確かだ。内容にそぐわないやわらかな語り口や、登場人物の生き様に絡めて語られる昭和史のステロタイプさ――おそらくそれはかなりの部分意図的に設定されたもので、それはこの小説が徹頭徹尾「語る」ことについての物語であることを意味する。そしておれは今、「語る」ことに信頼を置くことがどうしてもできずにいるのだろう。

赤朽葉家の伝説

赤朽葉家の伝説