フランツ・シュミット/ある首斬り役人の日記

16世紀後半から17世紀にかけて死刑執行人に務めたフランツ親方の日記。ていうか業務日誌。
本当に淡々と記しているし、所詮は市井の犯罪者なので、こういっちゃあなんだが地味ではある。しかしだからこそ積み重ねられるものもあるのだし、時々やれ首が動いただ詩を詠んだだといった印象的なエピソードがあるので、読んでいて飽きることはない。しかし焦点はやはり、ディティールだろう。中世ファンタジーの裏にあった事件の数々は重たくもしょうもない。個人的には、すべての職務を終えた親方が書き残す「これにて彼は職務を辞し/ふたたび立派な者となった」という一言が、彼の44年間、そして続いていく血筋を感じさせ胸に迫った。
しかし、当時の別名ときたら……やれ田吾作、直腸(くそぶくろというルビがついてる)、若い鵞鳥、あげくのどちんこときたら、そりゃ犯罪者にもなるわ。