有栖川有栖/ジュリエットの悲鳴

うむ。これはよい。よいが、地味であるなあ。どうも全体にスベり気味なのが好感度高い(ひどい云い方だ)。「裏切る眼」「危険な席」といった作品の不穏さもよいし、なにより「夜汽車は走る」が素晴らしい。叙情性なりなんなりは特に評価するようなもんでもないいが、いや、このプロットはいい。逆にこれであの人が書いたら……という気もするが。ショートショートの「世紀のアリバイ」もよい。