米澤穂信/犬はどこだ

……悪く、ない。うん。これは、あり、だと、思う。結末はちょっとどうかと思ったけど、まあこういう作風なのはわかりきっているし、今回はわりとさっくり受け入れることができた。
で、なんでこれは受け入れることができたのかと考えると、いつものようにガキでないのと、いつものように会話でもって《断絶》が提示されるわけではないからだと思う。うまくいえないが、他の作品を読んでいるとおれなんかはこのひとたちは喋るのが好きだなあ、と思う。他人に《断絶》を申し渡すときに、会って話すなんてことはオーバースペックであるとしか思えない。それでしか伝えられないことがあることくらいはわかるが、それでも。近距離優越感ゲームだよそんなものは。人間は思考することができるのだから、《断絶》なんてものは勝手に行動からたぐりよせればそれでよいのだと思う。それが大人だ。そういう話。
だから若さゆえというか別に年齢とは関係無いと思うが、そういうディスコミュニケーションへの糞みたいなロマンティシズムさえなければ、こういうひりひりしたシビアさというのはむしろ好みであると気付いた。まあ、ひとりの作家を読み続けるといのは、ひとりの人間と付き合うみたいなもので、結局は自分の付き合いかた/読み方へと向き合うということなのかもしれない。 ミステリとしては上々。この世界にはInternet Archiveはないのかとか、このころまだウォッチサイトがあったのかとか思うけどこの精度でネットを描写したというのはそれじたいで評価できるし。いじょう。