鮎川哲也/死者を笞打て

作家・鮎川哲也の作品に盗作の疑惑がかかり、潔白を晴らすために本人自ら盗作元(とされる)女性作家を探すというメタなようなそうでもないようなミステリ。
ミステリネタ自体は微苦笑を誘うような天真爛漫なもので(バカミスともいう)嫌いじゃないが、途中の捜索パートはかなり退屈。これはやはり《ある偏屈本格推理作家(50くらい)の生活と意見》として読んだほうがたのしい。しゃべりすぎ。
ただなあ、いかんせん主人公・鮎川哲也にかわいげがないんだよなあ。これでもうちょっと魅力があれば、おれのなかで「三重殺」とならぶひとりごと小説として君臨したんだけど。
とはいえ、当時のミステリ界のすがたを活写した部分は面白く読めるし、先述したようにトリックも無茶でなかなかなので、光文社とかで復刊されないかなー。今受ける小説だと思う。