「ジャガイモン」#23 『いとうゼミ』

昨日の夜、たまたま観た*1「ジャガイモン」#23『いとうゼミ』がとても面白かったので、久々に日記を更新することとします。
そもそも「ジャガイモン」はかつてテレ朝で放送されてた「虎の門」の実質的な後継番組としてCSテレ朝チャンネルで制作されているもので、「どーでもいい話」などのスタジオ企画と函館や富士山登山などのロケ企画のふたつを軸としています。個人的には「虎の門」のカラーが強く残ったスタジオ企画に当たりが多いと思います。
そして今回放送された「いとうゼミ」の内容を一言でいうと*2、「大学講師でもあるいとうせいこうが、バカリズムをはじめとした出演者に対して普段行っている小説創作の授業を行い、最終的に三島由紀夫賞を狙う」というものです。授業の内容そのものも、近代的な小説のなりたちから人称・視点の問題にいたるまで発展し、五年にわたって「表現・芸術系専修」などというわけのわからないところで創作の授業を受けてきた自分から見ても、相当実践的なものであると感じました。

じゃあ、小説教室に行けばいいのでは?

ここまで読んだ人は、こう思うかも知れません。いや、あんまりいないと思いますけど、でも根本的なところではここに行きつくところがあります。小説の書き方を知りたければ、それを教えてくれるところはいくらでもありますし、本もたくさん出ています。実際いとうにも、「文芸漫談」というすぐれた成果があります。
それをあえてテレビで放送する理由は何か? それはすなわち、小説教室に行ったり、創作ハウツー本に手を出したりしない人たちに対して、小説というものの面白さ、創作の面白さを伝える、というところにあります。そして、その目的を達成するために必要なものは、「面白さ」です。それも、小説や創作のそれらとはさらに別に、バラエティ的なものが必要とされているのです。たとえば、普通の小説教室をテレビで流したところで、それがどれほど面白いものであろうと、興味のない人々にとってそれは退屈なものになってしまうでしょう。

講師も生徒も「テレビに出ている人」である

そこに、この企画の講師がいとうせいこうでなければいけない理由があるのです。過剰なまでに多角的であり続けているこれまでの彼の活動のなかに含まれたタレントとしての活動が、完全にテレビ用に速く、起伏のあるものとしてカスタマイズされた授業としてフィードバックされているのです。さらに、生徒もタレントであるので、かけあいにもバラエティ的な面白さが生まれ、添削に30分以上費やしたにもかかわらずて退屈させない仕組みになっています。それでいて、授業の内容も薄まっていない。見ながら「テレビでこれだけ深い小説の授業ができるのか」/「小説の授業をこれだけ面白くテレビ番組にできるのか」という二重の興奮があり、小説書き兼バラエティ者としてほとんど感動に近いものがありました。これはまさしく、いとうせいこうにしかできない仕事であると思います。
授業において、まず実作を書かせたのも良かったです。個人的にはやはりダブルブッキング川元とバカリズムの作品が興味深かったです。はじめに小説を読まないと断言していたにもかかわらず、互いのコントの作風が色濃く反映されたものでした。これからも継続して制作されるようですし、比較的リピートが多い番組なのでこれからも放送の機会はあると思います。見られる環境のかたは是非チェックするといいのではないかと思います。ます!

*1:初回放送は10/1

*2:録画し損ねたので、改めてリピートされたら確認しなおしますが