山口雅也/日本殺人事件

なんだろう、この作品における「日本」っていうのはある種のクローズドサークル、っていう言い方が正しいのかわからないけど、特殊なルールが適用される閉鎖空間としてあるのだけど、少なくとも設定上の作者にとっては、そんなつもりはない(おそらくは)というのが面白い。日本という、私たちにとってあたりまえにあるものが、作中作のなかで自覚なしに推理小説によくあるガジェットに置き換えられている(そしてその構造を了解しうるのは、作品の外にある読者のみである)というメタ性、たとえば「人柱はミイラと出会う」などと比較したときにこの作品が際立つのは、そういうところだと思う。

日本殺人事件 (角川文庫)

日本殺人事件 (角川文庫)