森見登美彦/新釈 走れメロス 他四篇

いやー、面白かった。こいつは傑作だぜ!! 各作品とも原典の要素をセンスよく抜き出しつつ、森見流の奇想を織り交ぜながら、さらに「でもこんな風にも考えられるんじゃないですか?」という敬意ある挑発までもが行われてしまうのだから凄い。「走れメロス」など、原作のエッセンスを抽出しながらほとんど批判に近いメッセージを発しているにもかかわらず嫌味がまったくない。面白い小説であるとともにすぐれた批評でもあるわけだ。さらに「山月記」などに通底する創作への姿勢の真摯さは静かでありながら確かなもので、ああもう素晴らしい! 売れろ!
しかしいつまで京都で行くのだろう、とちょっと思った。

新釈 走れメロス 他四篇

新釈 走れメロス 他四篇