岡部敬史/Web2.0殺人事件

ひさびさにスキップで地雷を踏んでやった、そんな気持ちだった。そういう読み方をする本ではないことを承知で、ミステリとして感想を書くつもりでいた。今から思えば不遜だった。
たしかに酷かった。「ミクシィのアリバイ」はわずかな逆説の妙味を見せつつもそもそもがミステリではなかったし、「教えて!gooの暗号」には絶望させられた。「ブログ殺人事件」こそトリックと展開こそベタながら証拠を得る過程がテーマとうまく結びついていて好感が持てたが、続く「はてなブックマークを解読せよ!」「口コミサイトと招待客」はミステリ度がゼロに近い脱力短編。おまけに前者はせっかくのはてブを上司へのゴマすりにしか使わないという入門書としてもアレすぎる出来だった。しかし、ああしかし、それらがすべて第六話「YouTube誘拐事件」への序章だったなんて!
途中まではそれまでにも増して都合の良い展開に失笑すらしかけた。しかしそれらがロジック(!!)でひとつになるのには驚いた。そして衝撃の真相!なんてこったミステリしてるじゃないか!アンフェアはアンフェアだが、ここまでの話を考えるとそんなことはどうでもいい。トップランの四話みたいなもので、完全になめてかかっていると実情以上に印象が良くなるという例。

Web2.0殺人事件

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