日の名残り/カズオ・イシグロ

……いやあ、あー、そうか。粗筋だけ見た限りでは、静かな、情感に訴える小説かなと思っていた。読んでみたら、そういうところも当然あるんだけど、もっとごつごつして尖った小説だった。
そういう、主人公が秘めた強靭さというか硬さは、いまのおれにはある程度こたえるものではあるんだけど、でもやはり読み終えてみるとああ、いい小説だった、という感覚が身体に広がっていく。これはもう、仕方ないね。ある意味力業だよ。
ヘンリーもたまには旅に出るべきだ。執事じゃないけど。