保坂和志「書きあぐねている人のための小説入門」を読んだ。正直なところ「小説の自由」を読んでいるあいだ、これまで読んできた小説の多くが否定されているような、わだかまりというか違和感をずっと覚えていて、この本のはじめの何章かにもやはりそういうものを感じていた。実際のところ、この本の第六章において、そのあたりに関する説明というか、記述は試みられているのだけど、〈ストーリーがしっかりしているエンターテイメント小説を目指すことを勧めます。〉とか書いてあるのを読むと、やっぱりそういうのも〈小説〉なんじゃん!みたいに思う。いっそのこと著者のいう〈小説〉という言葉が〈文学〉に置き換えられていれば割りきることもできるのだろうけど、あえて〈小説〉という語が用いられているので落ち着かない、というか自分がふだん使っている〈小説〉という語とのギャップに戸惑ってしまう。同じことは高橋源一郎の「一億三千万人のための小説教室」を読んだときにも思ったのだけど。
しかしそのあたりを除けば、というか除いてはいけないのかもしれないが、非常に示唆に富んだいい本だと思う。と付け足すように書いても説得力がないかもしれないけど。

書きあぐねている人のための小説入門

書きあぐねている人のための小説入門